公開日 最終更新日 読了目安 約17分執筆・編集 大人の学び.com 編集部
超高齢社会が進展する日本において、シニア世代の終活・相続対策や、個人事業主・中小企業の事業承継への関心が急速に高まっています。こうした相談の現場で絶大なシナジーを発揮するのが、「行政書士」と「FP(ファイナンシャル・プランナー)」のダブルライセンスです。
FPは「家計や資産の現状を分析し、ライフプランや税務・相続のシミュレーションを行う資産設計の専門家」。一方、行政書士は「官公署への提出書類や、遺言書・遺産分割協議書など権利義務に関する法的書類を作成できる国家独占業務の担い手」です。
この2つの資格を兼ね備えることで、「お金や暮らしの包括相談(FP)」から「法的に有効な書類作成・行政手続き(行政書士)」までをワンストップで完結できるようになります。
本記事では、行政書士とFPの組み合わせが実務で高く評価される理由、試験範囲の重なりと社会人におすすめの学習順序、無理のないスケジュール設計、そして挫折を防ぐ通信講座の選び方を客観的に整理して解説します。
1. 行政書士とFPのダブルライセンスが実務で絶賛される3つの理由
行政書士とFPの組み合わせは、独立開業を目指す士業はもちろん、企業の法務・総務・金融機関に勤務するビジネスパーソンにとっても極めて実用性の高いタッグです。その理由は大きく3つあります。
① 相続・終活相談から「遺言書・遺産分割協議書作成」までのワンストップ対応
シニア層やその家族が抱える相続の悩みは、「誰にどの財産を遺すか」「相続税はいくらかかるか」「認知症になったら口座はどうなるか」といった複合的な問題です。
FP単体の場合、ライフプランの助言や相続税の概算シミュレーションはできても、法的拘束力を持つ遺言書の起案や遺産分割協議書の作成を報酬を得て行うことは弁護士法や行政書士法に抵触するためできません。
一方、行政書士単体の場合は法的書類の作成権限はあっても、金融資産の運用や生命保険の活用、年金受給との兼ね合いといった包括的な資産設計のアドバイスが手薄になりがちです。
ダブルライセンスを持つことで、「FPとして顧客の想いや資産状況を丁寧にヒアリングしてライフプランを提案し、行政書士として公正証書遺言の起案や遺産分割協議書を直接作成する」という一連の流れを他士業に外注せず自己完結できます。
② 成年後見業務や財産管理実務における安心感
判断能力が不十分になった高齢者を支える「成年後見制度」や「任意後見契約」は、行政書士の主要な実務領域の一つです(コスモス成年後見サポートセンター等)。
後見人として高齢者の身上監護や財産管理を行う際、月々の生活費管理、公的年金の受給手続き、介護保険サービスの利用計画、保有資産の取り崩しシミュレーションなど、FPの持つ生活設計スキルがそのまま実務に直結します。法律論にとどまらず生活の細部に寄り添える専門家として、家庭裁判所や依頼者から高い信頼を得られます。
③ 中小企業・個人事業主への許認可と資金繰り・財務相談の統合
行政書士の主力業務である建設業許可、飲食店営業許可、宅建業免許などの申請手続きにおいて、クライアントは常に「事業資金の調達」「社会保険・年金」「節税や将来の事業承継」などの経営課題を抱えています。
許認可申請の代行だけでなく、FPとして法人のキャッシュフロー改善や経営者のリタイアメントプラン、事業承継の事前対策までアドバイスできることで、単発の代行屋から「経営者の頼れるパートナー」へと差別化できます。

2. 行政書士とFPの難易度・学習時間・試験科目の客観比較
2つの資格は試験の性質や難易度が異なります。それぞれの基本データを整理して比較します。
| 資格名 | 合格率の目安 | 標準学習時間の目安 | 試験形式・実施時期 | 主な出題科目・内容 |
|---|---|---|---|---|
| 2級FP技能士(国家資格) | 約40〜60%前後(学科・実技別) | 目安:80〜150時間(3級合格後) | CBT試験(通年受験可能)/年3回統一試験 | ライフプランニング、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継 |
| 行政書士(国家資格) | 約10〜15%前後 | 約600〜800時間 | 年1回(毎年11月第2日曜日)/五肢択一・多肢選択・40字記述式 | 基礎法学、憲法、行政法、民法、商法・会社法、業務関連諸法令、一般知識(政治・経済・社会、情報通信等) |
出題範囲における最大の重複論点:「民法(親族・相続)」
行政書士試験の民法における「親族・相続編(身分法)」と、FP試験の「相続・事業承継設計」分野は、以下の重要論点が完全に重複しています。
- 法定相続人と法定相続分:配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹の順位と按分割合の計算
- 遺言の方式と有効要件:自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の作成手続きと保管制度
- 遺留分制度:兄弟姉妹以外の法定相続人に保障される最低限の取り分と遺留分侵害額請求
- 遺産分割の手続き:協議分割、調停・審判分割、遺産分割協議書の効力
行政書士試験では条文や判例の深い法的解釈が問われ、FP試験では基礎知識を前提とした具体的な相続税計算や生前贈与シミュレーションが問われます。両面から学ぶことで、知識の解像度が飛躍的に上がります。
3. 社会人におすすめの学習順序とダブル合格へのロードマップ
仕事や家庭と両立しながらダブルライセンスを目指す場合、どちらから受けるかで学習の負担感が大きく変わります。
王道ルート:FP(3級・2級)から行政書士へ(初学者に最も推奨)
法律学習が未経験の社会人には、「FP3級・2級で合格体験と税・法律の土台を築き、その後に年1回の行政書士に挑戦する」ルートが最も挫折を防ぎやすい王道ステップです。
- フェーズ1:FP3級・2級の合格(所要約3〜4ヶ月)
CBT試験を活用し、まずは日常生活にも直結するFPの勉強からスタートします。タックスプランニングや相続、不動産の基本用語に慣れることで、法律学習へのアレルギーをなくします。 - フェーズ2:行政書士試験に専念(所要約8〜10ヶ月)
年1回(11月)の行政書士試験に向けて、民法・行政法に全エネルギーを注ぎます。行政法(約112点配点)と民法(約76点配点)の2科目で合格基準点(180点/300点満点)の大部分が決まるため、早期から過去問の周回に入ります。
リバースルート:行政書士合格後にFP2級をスピード攻略
すでに法学部出身や宅建などの学習経験がある方、あるいは行政書士試験を先に受験した方は、11月の本番終了直後からFP試験に移行するのが効率的です。
行政書士で鍛え上げられた「民法の法的思考力」「条文読解力」があれば、FP試験の相続や不動産分野はほぼ無勉に近い状態でも高得点が狙えます。残る金融資産運用やリスク管理、タックスプランニングの要点を集中的にインプットすれば、短期間でFP2級の合格が可能です。
4. 行政書士・FP学習を支える主要通信講座の客観比較
独学での学習は途中で疑問点を解消できず挫折しやすいため、初学者ほど質の高い通信講座の活用が推奨されます。主要4校の特徴を整理しました。
| スクール名 | 対象講座 | 教材形式・受講スタイル | 主な特徴・向いている学習者 |
|---|---|---|---|
| オンスク.JP | 行政書士、FP2級・3級 | 完全オンライン(1講義約10分スライド動画+Web問題集) | 月額定額で行政書士とFP両方の講義が受け放題。通勤や休憩中のスキマ時間で基礎インプットを回したい社会人に最適。 |
| 生涯学習のユーキャン | 行政書士、FP2級 | フルカラー紙テキスト+個別添削指導+Web学習支援 | 初学者目線のわかりやすい図解と親身な添削指導。給付金対象コースもあり、手堅く合格力を養いたい方に向いています。 |
| LEC東京リーガルマインド | 行政書士、FP2級・1級 | Web通信/通学(本格テキスト+答練+全国公開模試) | 法律資格指導の老舗。記述式対策や精度の高い全国模試で、行政書士試験の一発合格と本格的実務力を目指す方に最適。 |
| 資格スクエア | 行政書士 | Web通信(動画講義+Web問題演習+質問サポート) | 名物講師による明快な解説と機能的なWeb過去問演習。スマホ中心の効率的学習で行政書士試験の突破を狙う社会人向け。 |
5. おすすめ通信講座の詳細スペックと活用法
各社の講座仕様、サポート内容、おすすめの活用法を詳しく比較します。
行政書士もFPも月額定額で学び放題。スキマ時間学習に特化したマルチ資格プラットフォーム
月額定額制(一括年額プランあり)
行政書士・FP(2級・3級)を含む多講座が受講し放題
- ✓手軽な月額定額料金体系:行政書士講座とFP講座を別々に申し込む必要がなく、1つの月額料金で両方の科目を学習可能。
- ✓1講義約10分のスライド動画:通勤中や家事の合間など、短時間のスキマ時間に集中して視聴しやすい講義設計。
- ✓演習機能と復習機能の充実:過去問演習や間違えた問題の復習機能がアプリ・Webに備わっており、基礎定着を促進。
行政書士とFPの両方の基礎講義を同一の定額サービスで並行・順次受講したい方/通勤時間や昼休みの10分間を使ってスマホで講義視聴や問題演習を進めたい社会人/まとまった高額初期費用を抑えて、まずは基礎知識のインプットから始めたい方
※※プランの詳細および最新の利用規約はオンスク.JP公式サイトをご確認ください。
法律系国家資格のパイオニア。質の高い実力派講師陣と全国模試・記述式徹底対策
一括払い/教育ローン対応
Web通信・DVD通信・通学対応+本格的過去問集+全国模試
- ✓長年の指導実績と教材の網羅性:長年にわたる法律資格指導の歴史があり、試験の最新出題傾向や法改正論点に完全対応。
- ✓合否を分ける記述式対策の充実:行政書士試験の要である40字記述式問題に対し、専用の演習講義と丁寧な採点基準を提示。
- ✓本番さながらの全国公開模試:多数の受験生が参加する模試を通じて、正確な実力判定と本番シミュレーションが可能。
行政書士試験の一発合格を目指し、本気で合否を分ける記述式や民法・行政法を極めたい方/長年の受験指導ノウハウに基づいた質の高い講義と的中実績のある全国公開模試を受けたい方/将来の行政書士独立開業や実務への直結を見据えて、本格的な法律理論を基礎から固めたい方
※※コース別の受講料および最新の開講日程はLEC公式ページをご確認ください。
オンライン学習に特化した効率的カリキュラム。森T講師の講義とWeb問題演習機能
一括払い/分割払い対応
スマホ・PC対応Web動画講義+Web問題演習機能+質問サポート
- ✓分かりやすさで定評のある講義:法律初学者でも挫折しないよう、具体例や図解を多用した明快な講義構成。
- ✓効率的なWeb問題演習システム:間違えた問題や要復習問題が自動抽出され、弱点を効率的に反復克服可能。
- ✓オンライン質問サポート体制:講義画面から直接疑問点を質問でき、学習上のつまずきを迅速に解消。
分厚い紙テキストの持ち運びを避け、スマホやタブレットでスマートに行政書士を攻略したい方/初学者でも飽きずに楽しく学べる分かりやすい講義動画で短期間に合格ラインを目指したい方/通勤中や空き時間にデジタル問題集で繰り返しアウトプット演習を行いたい方
※※最新の受講料金およびキャンペーン情報は公式サイトをご確認ください。
行政書士・FPの学習と実務を支える無料公的ツール&情報源
行政書士およびFP(ファイナンシャル・プランナー)の学習や実務では、信頼できる公的機関の遺言制度ポータル・公証役場ガイド・試験実施団体の公式資料を活用することが正確な理解への近道です。通信講座の講義や問題演習と併せて活用したい定番ツールと公的データベースを整理しました。
| アプリ・公的ツール名 | 主な機能・役割 | おすすめの活用シーン | 利用料金・提供形態 |
|---|---|---|---|
| 法務省「自筆証書遺言書保管制度ポータル」 法務省 自筆証書遺言書保管制度 ➔ |
法務局における自筆証書遺言書の保管制度の手続き・申請書様式・チェックポイントを確認できる公的ガイド | 民法の相続分野やFPの相続設計で学ぶ自筆証書遺言の保管制度の実務的な要件や書式を正確に確認したい時 | 完全無料(法務省公式) |
| 日本公証人連合会「公正証書遺言ポータル」 日本公証人連合会 公式 ➔ |
公証役場で作成する公正証書遺言の手続きの流れ、必要書類、公証人手数料令の基準を公開する公式ポータル | 行政書士の遺言書作成支援実務や、FPの相続資産承継相談において公正証書遺言の作成手順・費用基準を確認したい時 | 完全無料(日本公証人連合会公式) |
| 日本FP協会「便利ツール・ライフプラン診断」 日本FP協会 公式ポータル ➔ |
日本FP協会が提供する家計のバランスシート・キャッシュフロー表・ライフプランシミュレーションの公式ツール | FP学習においてライフプランニングや資金計画の具体的な計算方法・フォーマットを体感したい時 | 完全無料(日本FP協会公式) |
| 行政書士試験研究センター「公式試験情報ポータル」 行政書士試験研究センター 公式 ➔ |
行政書士試験の実施日程・願書受付期間・合格基準・過去の試験問題および正解番号を公開する指定試験機関ポータル | 行政書士試験の最新の年間スケジュール、合格ライン基準、過去の出題内容を正確に把握したい時 | 完全無料(行政書士試験研究センター公式) |
行政書士とFPのダブルライセンス学習で挫折を防ぐ3つの実戦テクニック
- 1. まずFP2級・3級で合格の勢いをつけ、年1回の行政書士に挑む:FP技能士はCBT試験(パソコン受験)の導入により、年間を通じて自分のタイミングで受験できます。まずFPを3〜4ヶ月で確実にクリアして基礎的な税金・民法の概念を身につけ、その勢いで年1回(11月)の行政書士試験に集中投下するのが最も挫折しにくいルートです。
- 2. 「民法の親族・相続編」を架け橋にして知識を相乗させる:行政書士試験の民法(親族・相続)と、FP試験の「相続・事業承継設計」は、法定相続分・遺言・遺留分・遺産分割など出題論点が完全に重なっています。行政書士の深い条文解釈とFPの税務・資金シミュレーションを連動させることで、双方の理解が深まります。
- 3. 通信講座の講義動画とスマホWeb問題集をスキマ時間にフル回転させる:オンスク.JPや資格スクエアなどのデジタル演習ツールを活用し、通勤や休憩の15分に行政書士の過去問肢別演習やFPの一問一答を解く習慣をつけます。机に向かう時間は記述式対策や総合問題演習に充てることで、社会人でも短期間で合格水準に到達できます。
動画で学ぶ:行政書士がFPを取得した後の実務での活かし方
YouTube で公開されている『行政書士がファイナンシャルプランナーを取得した後の活かし方|行政書士開業の本音』(チャンネル:行政書士開業の本音)です。現役の行政書士が、ファイナンシャルプランナー(FP)資格を取得したことで得られた実務上のメリット、顧客への提案の幅、独立開業における相乗効果と具体的な収益化へのアプローチを本音で語っている動画です。(当サイトとは関係のない第三者の公開動画です)
- 行政書士の独占業務(書類作成)とFPのライフプラン・金融相談がどのように融合するか
- 顧客からの相続・終活相談においてワンストップで対応できる強みと信頼感の向上
- 資格を単なる肩書きに終わらせず、実務の現場で具体的な売上・提案に結びつけるポイント
6. 行政書士とFPのダブルライセンスに関するよくある質問
Q1: 行政書士とFPのダブルライセンスは完全独学でも目指せますか?
FP2級・3級は完全独学でも合格者が多くいます。しかし、行政書士試験は合格率10〜15%前後の国家資格であり、民法の解釈論や行政法の条文・判例、40字記述式の採点基準など独学ではつまずきやすい難所が多く存在します。最短距離で合格を掴むためには、少なくとも行政書士試験に関しては通信講座を活用してプロのカリキュラムに乗るのが確実です。
Q2: 2つの試験を同じ時期に同時並行で勉強しても大丈夫ですか?
同時並行はあまりおすすめしません。行政書士試験は年1回(11月)しかチャンスがなく、直前期の詰め込み演習が合否を直撃します。通年受験可能なCBT試験のFPを先にクリアして基礎を作ってから、年1回の行政書士にリソースを全集中する「時期をずらした逐次受験」が最も成功率を高めます。
Q3: 実務未経験の社会人でも独立や転職で役立ちますか?
大いに役立ちます。行政書士の独占業務である「書類作成」のスキルと、FPの「相談・ライフプラン設計」のスキルが合わさることで、実務未経験であっても相続・終活分野における差別化されたサービス展開が可能です。また一般企業の法務や金融機関・不動産会社のバックオフィスへの転職でも高い評価を得られます。